H18.4.16 雨の小田原をゆくW2

RXPを使って新幹線を撮る

平成18年4月、高感度リバーサルフィルムRXPが登場した。デジタル化への進行が著しい昨今、リバーサルフィルム最大の武器である高彩 度、更にはハイライトのヌケはどうなのか?光量不足時の反応は果たして? 高速シャッターを必要とする新幹線撮影において、この新 登場のRXPにかかる期待は大だっ・・・

そこで、約1ヶ月かけてこのRXPの試撮りをしました。実際のところ、フィルム1本取り終えるのに約1ヶ月かかってしまったと言ったほ うが正しい表現かな・・・ なお当サイトは、このテスト結果を公開するにあたって、事前にメーカー側に通知し承諾を得てあります。

◆  気象条件の違いによるRXPテスト  ◆

使用レンズをEF400oF2.8L×EX2として雨、曇り、薄曇りと異なる条件でJ 1,W 1,C 1と狙ってみた。EF400oF2.8L×EX2で の撮影は、私の装備の中で、フィルムの持つ粒状性とピントへの影響が最もはっきり判るからである。

超望遠レンズでの撮影結果・・・EF400mm×EX2

■ 初陣は小雨舞う小田原で

まず最初に、雨天での撮影を試みた。久し振りの恋人とのデート は生憎の雨。でも、RXPの試撮りにはもってこいの気象条件だっ。

東海道新幹線 小田原U1#14号車付近
H16. 2.22 15:02 8994A J 1
Canon EOS 3 EF400o F2.8L IS USM × EX2
1/250sec f5.6 RDPV+1

▲ 東海道新幹線 小田原U1# 15号車付近 H18.4.16 7890A J 1
Canon EOS 3 EF400oF2.8L IS USM×EX2 1/1000sec f6.3 RXP+1
 露出補正:バラストを評価測光したものから−1/3段。

久し振りといえば小田原での撮影の方がもっと久し振りかなっ。まずは2Aから狙ってみた 。このページのタイトル写真が そうである。見てのとおり、まずまずの降雨状態で撮影時刻は10時55分でした。その後11時10分頃には小降りになり、J 1は11時22分 に定通!もっと降っていて欲しかったというのが本音で、まぁいいデータ収集ができたことを考えるとこれでヨシと しなければ・・・

左の写真は、RXPでのJ 1初ショット!超微粒子のRDPVと粒状性を比較すると、当然レースにならないが、注目は何といってもこの色だ 。どんなもんだいこの色!歴代 のISO400リバーサルでは考えられないカラーバランスの良さだ。また、周囲が暗い中で列車の顔を正面で捉えると、前照灯との コントラストが大きくなるため顔が飛んでしまう。RDPVでの撮影は暗雲垂れ込める天気だったため、顔以外の露出を無視して撮った。 いや、こうするより方法がなかったといったほうが正しい表現かな。その点RXPを使用すると適正露出で捉えることができた。その数字が 示しているとおり2+1/3段、この差はやはり大きい。

この際だからはっきりいってしまおう・・・今までのISO400リバーサルフィルムRHP・U・Vのあののっぺらとしたシアンがなくなり、 リバーサルフィルム本来の発色が出ている。合言葉は、「いざとなったらRXP !」そうこれからは、仕方が ないからRHPではなく、ここ一番RXPといった使い方ができるのだ。




■ 曇天下での反応は・・・

さて今度の舞台は曇天下の豊橋、GW最初の日曜日。ご登場頂くのはライトグレーの稲妻W 1!

▲ 東海道新幹線 豊橋U1# 16号車付近 H18.4.30 9A W 1
Canon EOS 3 EF400oF2.8L IS USM×EX2 1/1000sec f10 RXP+1
 露出補正:バラストを評価測光したもの±0。

500系ではどうなのか?RXPの謳い文句に『“百聞は一見に如かず”ISO100クラスの鮮やかさで、階調も豊富。高感度向きの条件に限らず、常に 使用したくなる色。』ほぅ、メーカー側はかなり強気なコメントでアピールしているではないか。果たして本当に、常用フィルムとして 使用できるレベルなのか?まずは、画面全体がハーフトーンとなる薄曇りでの反応を試した。被写体はライトグレー、“百聞は一見に如か ず”右の写真を見てもらえば解るが 、カラーバランスも 良い。常に使用したくなる色と謳っているだけのことはある。

RDPVと比較してみると粒状度の差の分、輪郭がややシャープネスでないという点で劣るだけだ。これは致し方ない。今までのISO400を 考えると遥かにシャープネス。理想に一歩近づいたフィルムといえよう・・・

さて次は、舞台を名古屋に移して、700系量産先行試作車C1を狙ってみた。


■ 明るい曇り空

▲ 東海道新幹線 名古屋D0# 16号車付近 H18.4.30 19A C1
Canon EOS 3 EF400oF2.8L IS USM×EX2 1/1000sec f10 RXP+1
 露出補正:バラストをスポット測光したものから−2/3段。

今度は700系だ。明るい曇り空での700系の撮影は、コントラストがはっきりと出てしまい非常に露出設定が難しい。薄日が差している状態だと 側面が陰り、先頭部が太陽光の反射を受け前照灯部分の色が飛んでしまう。ハイライト部の色ヌケがよければ、少々車両側面の露出を考慮した 露出設定にできるはず・・・

700系はこのような条件下で、超望遠レンズを使用し、先頭部を大きく捉えるショットでは、バラストをスポット測光したものから−1段程度 の露出補正をしてきた。しかし、画面全体の露出を見るとアンダー。左の写真のようにある程度車両側面の露出も必要なアングルの時ではどうして も顔の部分が飛んでしまう。ところがどうだろう、RXPはハイライト部の色ヌケが良いため、このように仕上がった。実にお見事!



■ RMS粒状度とは?▼ 以下メーカー側のコメントを基に解説しますと・・・

粒状度とは・・・画像のザラツキ感を数値化したものです。 均一に露光され現像された部分をミクロ的に見ると、濃度の濃い部分と薄い部分とが入り混じっています。これがザラツキ感の元です。 この微小部分の濃度を測りそのバラツキの標準偏差値を求めたものが粒状度です。つまり、粒状性が良い場合はこの濃度変化が小さく、 標準偏差値は小さくなります。これがいわゆる微粒子、 一般的に低感度フィルムがこれになります。逆に悪い場合は濃度変化が大きくなり、標準偏差値は大きくなります。 つまりこれが粗粒子、一般的に高感度 フィルムはこれになります。

RMS粒状度とは、統計で 使われる標準偏差値のことで、測定値の粒子集団のバラツキを表します。従って数字「1」自体の特別な意味はなくRMSの値が小さいほど濃度値の ゆらぎが小さくザラツキ感が少なく感じます。一般的にハロゲン化銀が小さくなれば、粒状性も良くなりフィルムの大きな特性の一つとなってい ます。




超望遠レンズでの撮影結果・・・EF400mm×EX1.4


■ 起死回生のRXP・・・晴天斜光


▲ 山陽新幹線 西明石D1# H18. 4.23 7956A Z0
Canon EOS 3 EF400oF2.8L IS USM×EX1.4 1/1000sec f14 RXP+1
 露出補正:バラストをスポット測光したものから−1/3段。
 

高感度フィルムの特性を利用して意図的に映り込みや色反射で臨場感を出してみたらどうなるのか?フィルム感度が高い分、絞り込める。 つまりそれだけ被写界深度が深くなり、画面全体がシャープになる。ここにターゲットを集中してみた。以前RDPUが出始めた頃、まだこの私が 写真の通信教育を受けていた頃なんだが、小田原でよく早朝の301A,1Aを狙いに行っていました。その頃の目標は“置きピン1発切り”これだけに 集中していました。光量不足の時などは、列車が止まって写る最低のシャッタースピードに設定し、絞りは無視して撮影しました。ところが どうでしょう・・・周囲のモノが、パールホワイトの車体に映り、物凄く迫力のある画面に仕上がっているのに気付きました。それが当時は何で こうなるのか解りませんでしたが、勉強していくうちに意図的に画面効果を狙う方法として、私の身についてきたのでした。

左の写真の原板が上がったとき、ヨシ!思わず拳を握り絞めた。今までの高感度リバーサルの常識を覆すような、サッカーに例えると起死回生 の超ロングシュートを放った感じだった。これからの撮影に大きなのぞみが・・・そんな手応えを感じた。

写真上達にはまずどんな条件でも撮る。そうするとその条件では、どのような方法で狙うのが最良の撮り方なのかそれが自然に身につきます。 この私に撮る喜びを再認識させてくれたのがこのRXPです。今後は、RDPVと併用して使い込んで行きたいと思います。条件によって使い分けが できるということは、撮影の幅が広がり感動も更に増えるということです・・・。

一本のフィルムで、私自身これだけ緻密にデータ収集を試みるのは初めてのことである。つまり、それだけこのRXPにかかる期待度が大で あることを意味するに他ならない!デジ化が進む昨今では、自分自身フィルムの弱点は十分に解っている。しかし、まだまだフィルムには フィルムの優れた部分があり、デジは開発途上!これは、メーカーにとってもいえることだっ。しかし、日進月歩、デジは今や侮れない 存在になってきたのは事実だっ。それでも、各メーカーがフィルム販売を撤退してゆく中、根強く開発を続けるF社にとって、このフィルム が奏でる彩には、常に、それならではの味があるからである。また、味は、作者のこだわりが引き立たせるものである。




超望遠レンズでの撮影結果・・・EF400mm

■ 雨の小田原!

RXPがデビューして1年が経過した・・・私自身、確固たる結果を証明する写真を 撮りたかったのは事実だ。平成19年のGWは5月5日まではカレンダーの赤い日は全て晴れだった。しかし、連休最後の日曜日5月6日は、 生憎の雨・・・というよりは待ちに待った雨となり私は久し振りに小田原に出掛けました。

折角の雨のF1のぞみが・・・雨量不足では
▲ 東海道新幹線 小田原駅U1# 7号車付近 H19. 5. 6 6170A F1
Canon EOS 3 EF400oF2.8L IS USM 1/1000sec f5 RXP+1
 露出補正:バラストを評価測光したものから−1/3段。
▲ 東海道新幹線 小田原駅U1# 7号車付近 H19. 5. 6 9214A J18
Canon EOS 3 EF400oF2.8L IS USM 1/1000sec f5 RXP+1
 露出補正:バラストを評価測光したものから−1/3段。

この日の小田原は、臨ダイヤの300系のぞみや500系のぞみの雁行が撮れるとあって雨の小田原定通を狙いに10名程のマニアがいた。 最初のターゲットは、臨A3281にのったF1だ・・・  F編成の登場当初は 、基本的に直通のぞみ限定の運用 だった。平成19年のGWは臨のぞみのダイヤに充当されたF1。そして、GW最終日は雨。これは久し振りに小田原でいただきとばかり ニンマリ。ところが、11時52分6170Aが小峰の暗闇から顔を出したときの雨量がイマイチで本人頗るご機嫌斜め!しかし、その11分後に 現れた9214Aはグーだった。

案外雨を狙いに行くと雨量に恵まれず、シュートを放ってもゴールの枠を捉えることができないのが現実だっ!まして特定の編成 を狙うとなると猶の事である。悪いことに、撮影時間帯が小雨で帰り道が大雨ならもう踏んだり蹴ったり・・・ また、撮影中の大雨も 困ったもので枕木やレールが見えなくなるほど降られると置きピンができなくなるのでちょっとお手上げである。この様な場合は、レンズ の撮影距離で合わせるのだが、超望遠レンズ仕様に要求されるシビアなピンワークは望めなくなる。

当然のことながら雨の撮影は雨量がものを言う。左の上下の写真を比較してもらえば一目瞭然!小雨より適量の雨の方が露出があるの が判る。そして肝心なことは、水飛沫を強調するためには高速シャッターで切る必要があるということだ。そこでRXP+1に任意設定。余裕 の1/1000secでシャッターが切れる。つまりここがポイントだ。そしてメリハリのある色、こいつがきちん と出てくれないと意味をなさない。

今更言うまでもないが、このRXPは雨天でのカラーバランスが特に良いため自信を持って使用できる。 どうだいこの色!RXPは、実に頼もしいリバーサルフィルムといえよう。




さて、この日のメインの500系のぞみ の雁行だが、 9172Aが通過したときに比べると、露出が約1段落ちだった。それでも1/1000secでシャッターが切れるのがなんとも嬉しい。

▲ 東海道新幹線 小田原駅U1# 7号車付近 H19. 5. 6 9172A W4
Canon EOS 3 EF400oF2.8L IS USM 1/1000sec f3.5 RXP+1
 露出補正:バラストを評価測光したものから−1/3段。




水飛沫を強調させるには、背景が山などで黒く写らなくては折角のウォータースクリーンも台無しです。また、被写体と背景の距離が遠い と水飛沫が消されてしまいます。先頭車からパンタのある車両プラス2両程で収まるアングルで、すぐ背後に小峰トンネルがある小田原 は格好の場所だ。このページトップの2Aは800oで捉えているが、水飛沫の上がる場所が最も黒くなる400oで狙うのがベストです。まぁ、 この辺の蘊蓄は応用編でも既に 解説済みですが、このたび改めて雨の醍醐味を感じさせられました。

近くでこだまの到着を待っていた少年は、本線を通過する列車の舞い上げる水飛沫を見て、
「すっげぇ〜ッ!」
と叫んでいた。そうこの感動を私は一枚の写真で表現するため、RXPという強い味方と共にここに立っているのだと実感した。

  ちなみにこの日、臨A3206に はW4が、A75にはW2がそれぞれ充当された。W1はというとこの日 もA72だった。

  雨の日は、どちらかというと気持ちがのらないものだが、ウォータースクリーンの臨場感を思い 出し、何度も何度も、しつこく足を運ぶ根気強さが大切である。




R M S(P-4)との比較

RXPを一番露出条件の悪い暗雲下で使用し、それをかつて非常用フィルムとして使用していたRMS(P-4)と比較して みました。

■ 暗雲下の撮影

左下の写真は、J 1が4全検に入る3日前の写真。まだ前面化粧帯がオリジナルのままだから、とても懐かしく感じる・・・

▲ 東海道新幹線 新大阪D2# 1号車付近 H 9. 3.20 232A J 1
Canon EOS 5 EF70-200oF2.8L USM 1/180sec f4 RMS(P-4)
 露出補正:バラストを評価測光したものから−1段。
 
▲ 東海道新幹線 東京駅U18# 1号車付近 H18. 6.25 6638A Z0
Canon EOS 3 EF400oF2.8L IS USM×EX2 1/400sec f5.6 RXP+1
 露出補正:バラストを評価測光したものから−2/3段。

舞台は雨の新大阪だった。3月23日に全検入場するため、最後の距離調整に入っていたJ 1は、3月18.19.20日の連日、東京〜新大阪 を2往復し2074.6キロを走破するA140に 充当された。

暗雲に覆われた状況下での撮影で、大引P1〜D3#への入線を狙った。この頃の非常用フィルムRMS(P-4)で の撮影。あまりの暗さにカラーバランスも崩れてしまった。ここまで露出アンダーだと全体の暗さが締まりのない感じだ。もっと陰の色に重みが あると画面が引き締まるのに・・・これはRMSの 持つラチチュードを超えてしまっているからだ。

今思うと、この時RXPが存在していたらもっと違っていただろうな・・・ その当時は、暗いから仕方なくRMSを使うしかなかった。写真の テーマは“大引から新大阪駅23番線に入線してくるJ1”だったため、流すのは意味がないと判断したからだ。P1出庫〜D3#到着まで4分。 推定15q/hでの走行。被写体を止めることはできたが、写真として生かすことができなかった。

こうして実際にRXPとRMSを比較してみるとその違いがはっきりと判る。この両方の比較、それぞれのレンズは違うが、「暗雲に覆われた状況下、 露出アンダー」ということで判断してみる。RXPの方は、RMSより陰の色に重みがある。 そして何よりも粒子が細かい。粒状性の点でRDPVと比較するとレースにならない。しかし、条件を下げるとどうだろう・・・競馬に例えればG1 では勝てないがG2ならズバリ勝てる!そしてG1でも勝てはしないが連には絡むといった感じがRXPだ。

左の写真を見てもらえばお解かりでしょうが、どんより曇った典型的な梅雨の朝。こんな状況でもヨンニッパ×EX2で撮影できるのがなんとも 嬉しい。まぁ、どれくらい反応してくれるかという期待もあった。既にこの時点で、浜松町Bv付近下り本線切替復旧の時にもこのRXPを使って撮影 しているので不安はなかった。これからの撮影は、フィルムの選択が明暗を分けるな・・・そう感じた。




◆  The Twilight hour  ◆

今度は、日の入り時刻にRXPを使ってその反応を試してみました。

広角レンズでの撮影結果・・・EF17-35mm

■ 微光量では

日の入り後は、一気に光量が低下する。空の露出と陰になる地上部分、つまりバックの空と被写体との露出の差が最も大きくなる時間 帯である。

▲ JR東海浜松工場第一伊場踏切 引上2# H18.12.15 (8613A) J 1
Canon EOS 3 EF17-35oF2.8L USM (35o) 1/320sec f5 RXP+1
 露出補正:全体測光の+1/3段。

RXPが出る以前は、黄昏時の撮影とくればRDPUやRDPVでスローシャッターにして流し撮りというパターンが主流だった。今回は、被写体 を止めることにテーマを置いてみた。そこでまず、おのずと撮影条件が限られてくるのだ。撮影時刻は、日没時。天候は西高東低冬型の 気圧配置で空のグラデーションを強調する。更に、被写体ができる限り遅いスピードで撮れる場所。この条件にピッタリとハマッタの が2006年12月15日のJ 1出場だ った。

この日の日の入り時刻は16:36。J 1の踏切通過推定時刻も 16:36。恐ろしい程に条件が揃ったものだ。フレーミングは、バックの空と被写体との露出差が大きいということを頭に入れ、更に冬の空を強調 するため広角レンズを使ってローアングルで構えた。天地の割合は3:1で出た目の +1/3段。左右は、右側に架線柱などが入るので切り捨てた。

数日後、仕上がった原板を見ると・・・う〜ん、これなら大丈夫。これからもっと色々とトワイライト撮影を楽しめるかな・・・?そんな 予感がしましたね! 

今後は機会があったら黄昏時の本線走行シ−ンも撮りたいですね。但し、条件はもっと厳しくなりますが・・・




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