300X

事業用車両TOPページへ

A 0



◆ 300Xプロジェクト ◆

JR東海の技術本部に“300Xプロジェクト”と称する島があった。このプロジェクトは技術の発展に大いに貢献し重要な役割を担った。

平成2年7月1日に“300X新幹線開発プロジェクト”として発足。これは、J0が落成して約4ヶ月後のことである。
よりよい鉄道サービスを提供するためには、間断のない技術開発が必要不可欠!との観点から、レール・車輪方式 における高速鉄道の理想的なシステムを究明するシステムとして、車両、軌道、電気、信号、運行管理の技術者が一堂に集まり、スタートした。

 A0古巣でのひととき
東二両にて H13. 1.17

平成7年1月20日に955形新幹線高速試験電車A0編成、通称300Xという試験用車両が落成した 。確認走行、速度向上試験、性能試験の のち、速度向上試験が 行われ、350q/h程度までの営業運転は技術的に可能であることを検証した。記録した最高速度 は443.0q/hで あったが、 これはR5000とR3000に挟まれた区間での 計画どおりの速度であって、速度の限界になる因子は特に見当たらなかったと聞く・・・

走行試験の後半は環境対策や乗り心地対策を営業列車に反映 させる条件変更試験も行われた。たとえば、各種のパンタグラフとカバーの 組合わせ、新型パンタグラフ、特別高圧用分岐器、車両間の騒音を低くするための車体の全周ホロ、乗り心地向上のための車両間ヨーダンパー、トンネルにおける空力的振動抑制のための アクティブサスペンション、減速度向上のためのセラミック噴射装置、新ATCシステム、曲線通過のための車体傾斜装置等々である。そのうちの いくつかは700系や300系改造用として実用化がはかられた。 

  そして、これらさまざまなシステム開発を成し遂げたのち、平成14年6月末日に300Xプロジェクトは解散した。



【 300X走行試験関係 】

平成7年1月20日に落成したA0編成は、300Xプロジェクトで検討してきたさまざまなシステム開発関係の走行試験を実施し、約7年 間の試験走行を施行し、平成14年1月15日(翌日にわたり)の最終走行試験を終えて、同年2月1日に編成名削除実施となった。

▼300X走行試験
  「実際の300X走行試験は非常に過酷なものだった」
と、当時プロジェクトのメンバーだったN氏が私に語ってくれた。そういえば、
  「あれは、人間の耐久試験でもありました」
と、かつてJ0が長期耐久試験を実施していた頃の担当者の記事を某紙で読んだことがあるが、なんとなくそれと共通するものが伝わってくる のだ。

走行試験の殆どは、営業列車が終了した深夜帯に施行された。A0は東二両に配置されていたが、その試験目的から留置場所や車両の 保守改造の便を考慮して浜工駐在となっていた。基本的に交検は車両配置箇所で実施されるものですが、この車両に関しては例外で、それを浜工で 行っていた。

300Xプロジェクトのメンバーの300X走行試験担当者つまりA0の乗務員及び添乗員は、走行試験当日16時30分〜試運転に 伴う準備及び事前打ち合わせを行う。A0は20時過ぎに浜工を出発。 一旦新大阪まで行き、折り返し京都で時間調整する。と、ここまでは臨回電。日付の替わる10分程前に臨試電で本番走行試験開始!列車保安方式 は検知式で行われ、ATCは開放。米原には日付が 替わった10分過ぎ頃の到着。着後車看10分。U1#に滞泊。添乗員は、データの仮整理後仮眠。では何故、京都→米原間の試験かというとJ0が最初 に270q/hの試験を行った場所でもあり、各種のテスト機器やセンサー類を設置してあったためである。

明けて、6時20頃浜松に向けて臨回電で米原を後にする。我々はここからが撮影本番! 浜工には、8時過ぎに帰り着く。そして 8時40分頃〜約2時間、試運転後の打合わせ及び試験項目整理に負われる。この試験パターンが週平均2回行われていた。

担当者の一週間を追ってみると・・・月曜日の朝、技本に出勤し試験項目及び運転指示内容の準備などをして、正午過ぎには浜工へと 向かう。上記の試験行程を終えて一旦技本に戻り、実際に帰宅するのは、火曜日の夜になるとか? 水曜日はだいたい技本に出勤。本部内の 会議等に出席するそうだ。木曜日はまた走行試験で月・火曜日と同じ行程をたどる。従って金曜日の夜にやっと帰宅できるのだ。土曜・日曜は公休 となるが、試験の計画変更があると土曜日は、出になることが多かったそうだ。
  「300X走行試験は非常に過酷ものだった」
というのは、この話からもお解かりいただけたかと思います。


▼えっくすを撮る!
  A0が過酷な走行試験を繰返していた中、これを我々は撮影していたのだが、なにせこの車両先頭車の形状が前後で異なるため非常に マニア心をくすぐるのだった。また試験車両なのでパンタやパンタカバーを替えたり、試験内容によって色々なパーツを搭載したりして、撮影して いてとても楽しい車両でした。
  この車両、編成名はA0。モニターはA99と表示され、愛称は300X。関係者は“えっくす”と呼んでおり、なかなか謎めいた部分の 多い車両だった。だから“X”なのかも知れない・・・? さて、その“えっくす”だが上記の走行試験の他にも山陽に出向いて走行試験を実施し たり、時には東京〜新横浜を4ヤマ!なんていう走行試験も行われた。そんな“えっくす”の写真集 〜ワイングラスの風〜 が次のページです・・・