◆ | JR東海が将来にわたる維持・発展に向けて、取り組んできた新ATCシステム。その実用化に向け、現車走行試験を施行し、その使命を 全うしたJ1の勇姿と、この新ATCシステムについて簡単にお話しましょう。 |
◇ | JR東海は、今日の新ATC機能での営業運転に向けて、東海道新幹線
の新しい自動列車制御装置の開発を進めてきた。
これは、平成11年より300X試験車両にプロトタイプの装置を搭載して、基本機能の走行試験を開始し、京都〜米原間で約1年半に わたり地上・車上間情報伝送性能や速度照査パターン作成に必要なデータを収集し、このデータを基に、量産先行型の地上装置及び車上装置開発・ 作製を行った。 基本的な考え方としては、カーブの多い東海道新幹線に措いて、列車の減速ロスタイムを短縮することにより、列車の運行本数を増加 。のぞみやひかりの停車駅を今まで以上に増やし 、こだまの通過待ち退避時間を長くすることができる。これは、更なる大量輸送を可能に し、かつ迅速化に 繋がるのである。 |
▼ | 従来のATC:「多段速度制御方式」 |
あらかじめ設定して速度信号を、線路を分割して構成される軌道回路区間ごとに線路から列車に送り、列車の速度がその速度信号を超え ている場合に、自動的にブレーキを作動させる方法。例えば270q/hでの走行から停止するまでに「230km/h」「170km/h」「30km/h」という段階的 な速度信号を 受ける。 | |
▼ | 新ATC:「1段階の減速制御」 |
線路から、前方列車や続行列車の位置の情報を列車に送り、前方列車の手前までに止まれるような減速パターンを作成し、走行している 速度から停止するまで、 なめらかな1段のブレーキ制御を行う方式。 |
* | 平成17年10月1日より東海道新幹線は、1段ブレーキ制御機能を追加使用。これは、平成18年3月18日 の新ATC機能での営業運転開始に向けて、乗務員訓練運転等を行うためのものだった。 |
新しいATCシステムを導入することにより、次のような効果を得ることができる。
* | 多段階ATCでは、着発の減速、加速によるロスタイム は約4分。 平成18年3月18日ダイヤ改正で東海道新幹線は、新ATC機能での営業運転を開始した。表面上は 、平成17年3月1日ダイヤ改正の列車運行と略変りはないが、その分ダイヤ全体に余裕が できた。特に、東京〜名古屋間での遅延回復の余裕時分が増えたといえよう。 |
実用化に向け、300系試験車両を使った走行試験により機能の確認を行い ました。これがいわゆる“新ATC走行試験”である。これは、営業列車から離脱したJ1の新たなる再出発、その第一歩といえよう・・・ |
◇ | 平成13年1月25日に5回目の全検を終えたJ1は、翌26日 に全検後の試運転を施行。1月27日に全検出場 、三島へ回送された。この日からJ1は三島駐在となり、 来るべく新ATC走行試験に備えるのであった。 |
この新ATC走行試験の第1ステップは、300X走行試験でのデータを基に、新に開発・製作した量産先行型の新ATC車上装置を搭載した 安全性に関わる確認走行試験だった。 |
◇ | 平成13年2月26日、いよいよ新ATC走行試験開始の日がやってきた。 なんとこの日は試運転ラッシュで他にA0とT4も動くのである。 | |
モニターにはずらっと列番下3桁900番台が並ぶ! が、いずれも夜間走行のため、まともな走行写真の撮影は不可能である。 J1は三島車両所の着発線を 23:4630に出発。三島U1#に23:4945到着し、 0:02に 995Aでいよいよ走行試験開始 。現行のATC速度段の信号を新ATCでは、270q/h→30q/h→× に。極端な話、270q/hで走行する山手線の電車が急減速して停車すると仮想していただければ解かるかと思います。ちょっと大げさかな・・・ 急減速、急加速を繰り返し0:2445静岡U1#に到着。 帰路は、0:3945に996Aで静岡を発車し下り 同様、急減速、急加速を繰り返し三島U1#に1:0545に到着する。 |
こうして9000番台として生まれてきた宿命か、再びJ1の試験車としての生活が始まったのでした。そして、同年6月には、その試験 で得たデータから有識者による部外委員会で1段制御機能の安全性は十分との評価を受けたのでした。 |
◇ 平成13年3月23日には5回目の全検後初の交検のためJ1は朝方東一両に回送され、終了後夕刻に再び三島へと回送された。
東一両着発線33番に到着するJ 1= 6899A |
交検を受けるため庫8番に向かうJ 1 |
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ちなみに300系の交検回帰は23.5日 。トヤを入れることで交検回帰日数を延長できるため 、J1は約2ヶ月に1回の割合で交検を行っていた。 つまり約2ヶ月に1回東京に帰ってくるのである。これが、唯一の東京近郊での撮影チャンスとなっていた。J1が9000番台としての使命を全うする ならば、こちらとしてもこれを撮る使命がある。しかし、交検回送の日は何故か天気があまり良くなかった。 |
交検翌日の回送となったJ 1=6898A |
三島へ回送されるJ 1=6939A |
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平成13年11月5日には、試験区間をこれまでの三島〜静岡間から米原〜京都間に移し、第2ステップに入りました。J1は、三島を夜出て 新大阪で折り返し、名古屋U0#で滞泊する。翌日早朝に三島へ回送するパターン。この早朝回送が撮影ターゲット!
平成13年12月18日は、浜名湖でJ1.A0.C1.W1.B1.T4が午前中に撮影できたオイシイ日でした。
*********************** シャリョウ タイハク モニタ 12/18 6:00 ***********************
トウ1 J01 6930A - 6938A - 6899A1
ハツ A99 6920A
トウ1 C01 2002A - 3709A2- 754A2- 1221A - 1754A - 1795A - 1098A - 877A1
ハカソシ B01 2749A - 112A - 721A2- 760A2- 105A
オサ1 W01 712A2- 5A - 500A
ハカソシ T04 3942A2- 981A - 4944A - 985A
*************************** シャリョウ タイハク モニタ オワリ ***************************
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この期間殆どJ1とA0は、饋電停止の
関係もあって同じ日に走行試験を行った。そして、走行試験明けが電気軌道設備測定と重なれば、マニアにとって祭日となるわけです。
東海道新幹線の高速試験関係は、大半がこの米原〜京都間で行われていた。今回は、いよいよ本格的に270q/h→×の試験である。 ここでの走行試験は平成14年3月18日まで行われました。 |
* | しかし残念ながら“えっくす”ことA0は、 同年1月15日で全ての試験関係を終了し、翌日一旦大一両に入出庫ののち浜工へと回送され、 2月1日付で編成名削除となった。そしてさらに、3日後の2月4日には 、G10の8両回送があり、片時も目が離せなかった。 |
* | 平成14年3月1日よりJ1は車両配置箇所を東一両〜東二両へ変更された。 |
◇ | 平成14年3月25日からは、試験区間を静岡〜浜松間に移し、いよいよ最終ステップに突入!これは 、平成13年12月にATC地上設備が更新された 静岡〜浜松間において、営業列車終了後の深夜時間帯に地上から車上への情報伝送品質など各種データの蓄積などを目的に走行試験を実施 した。主に走行試験は、深夜に三島を出発し静岡〜浜松間をひとヤマして 静岡U1#で滞泊。翌日早朝に三島へ回送する。これもまた早朝回送が撮影ターゲットだった。そして途中の新富士では 、U0で440Aを退避するという面白いダイヤが組まれて いた。 |
D1#に到着するJ 1 |
ラッシュのためD1#に到着する。 |
◇ | 平成14年9月2.5.9日、翌日にわたり、静岡〜掛川間でJ編成との擦れ違いテストを含めた走行試験を実施。この時期は週2で走行試験を 行っていたが、ウィークデーなのでなかなか撮影チャンスに恵まれなかった。 |
◇ | 平成15年に入るといよいよ新ATC走行試験も大詰め!そんなある日、私に三島へ出張する機会が訪れた。 頭の中はもうJ1を撮ることで一杯でした。しかし、相変わらずJ1の走る時は天気が良くない。そのため思ったようには撮影できませんでした。 |
◇ | 平成15年2月20日、翌日にわたり最後の新ATC走行試験が行われた。そして、2月21日早朝6930Aで三島両に入庫。この時点で、J1編成に
よる新ATC走行試験の全てが終了した。量産仕様の確定に必要な最終確認を含めた現車走行試験の終了は実用化に必要な条件が整ったことを意味
するのである。
ATC車上装置更新については、15年初より装置本体の取替えと、速度計や運転情報表示装置及びソフト、モニター装置の改修などを実施。 平成17年12月までに、全車両の改造工事を完了させた。JR東海所有の700系車両は、三島車両所で新ATC改造を、同じく300系は、全検入場時 に浜工で新ATC改造を行った。そして、700系車両による新ATC走行試験も実施され たのであった。 |
交検のため東二両へ回送されるJ 1=6938A H15. 2.12 |
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◇ J1は平成15年4月28日、次なる走行試験準備のため浜松工場へと回送された。1年前の台検回送同様GWの回送となった。
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