スープやシチューを食べるのに欠かせないスプーン。紅茶に砂糖を入れてかき混ぜる時も、必ず使うスプーン。小さくて、当たり前すぎて、ファンタジーの本でも、きっとどこかに出ているはずだけど、誰も気づかない。こんな小さなスプーンだけど、物語の大きなポイントになることもあるのです。
雑学辞典の第1回は、小さいけれど大事な役目を果たすスプーンのお話。主人公の命を救ったさじと、主人公の名前どころか本の名前にまでなってしまったスプーンが登場します。
「ミオよ私のミオ」 アストリッド・リンドグレーン
残酷な騎士カトーに閉じ込められたひもじさの塔で、ミオと親友のユムユムを救ったさじです。その塔に閉じ込められた人間は、ひもじさに苦しみながら一晩で骨になってしまうのです。ひもじさに苦しむミオがポケットから見つけたのは、朝日の橋を越えた「海の向こうの国」のイーリがくれたさじでした。騎士カトーにさらわれたイーリの妹のさじだったのです。
さじを口に入れると不思議な食べ物がいくらでも出てきいました。食べ終わったミオは勇気と元気を取り戻して、騎士カトーを倒します。鳥に変えられていた妹も無事に「夕暮れにささやく井戸」のある家に帰ることができたのでした。
「小さなスプーンおばさん」 アルフ=ブリョイセン
朝目がさめたらティースプーンぐらいの大きさになっていたおばさん。でも、ちっともうろたえない。「なるほど。スプーンみたいにちいさくなっちゃったんなら、それでうまくいくようにやらなきゃならないわね。」大きさはスプーンぐらいでも、肝っ玉はどんと大きい。
それにおばさんは、とびきりしたたかなのです。小さくなっても家事はなんなくこなします。自分が小さくなったことまで利用して。「あたしはスプーンくらいにちっちゃいけどさ、あんな南風がふいてきたって、あたしをふっとばすことなんぞできっこない」これを聞いた南風は、怒ってびゅーっとふいてきたので、洗濯物はみごとに干し物綱に引っ掛かったのでした。ところで、スプーン、スプーンといっているけど、このお話スプーンそのものは出てきたっけ。
小道具編、次回はハンカチです。お楽しみに。
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