エミリー・ロッダ作 あすなろ書房
オーストラリアの子供たちに大人気のファンタジー、ローワンシリーズの第一巻。
何よりも強いこと勇敢なことを重んじるリンの村で、少年ローワンは居心地の悪い思いをしながら暮らしていた。体が小さくて臆病で、小さい子でもできるおとなしい家畜のバクシャーの世話しかできなかったからだ。
勇敢だった父親が幼いローワンを火事の中から救うために命を落としたことも、村の人たちは引き合わないことだと思っている。
お話はファンタジーそのものなのに、こんな主人公の屈折した思いがこの物語を子供たちに身近なものにしている。
ある日川の水が干上がって、バクシャーたちは水を飲めなくなる。誰かが竜のいる恐ろしい山に登って流れを戻さなければならない。村で一番強い大人6人が名乗りをあげる。
しかし、意地悪なおばあさんが魔法をかけてローワンが持っている時しか地図が見えないようにしてしまったので、足手まといと思われながら、怖くてたまらない旅に出ることになる。
映画でもゲームでも、はじめは弱々しかった主人公は次第にたくましく勇敢になっていくのに、ローワンは最後まで怖がりのままで、恐ろしいものが現れるたびに悲鳴をあげている。
でも、困難な旅をするうちに、自分のことを嫌っていると思っていた強い大人たちにも、怖いものやつらい思い出があるのを知って、閉じこもっていた心は次第に仲間たちに向けて開かれていく。
そして、怖くてすくみそうになるたびにローワンの心を静めてくれるのは、大好きなバクシャーたちがローワンを信じて待っている姿を思い浮かべることだった。
本当の強さとは何かを考えさせられる本だ。
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