◆ 広角レンズを使用した撮影・・・ ◆


物陰から飛び出してく列車を撮るには・・・

下の作例は、平成13年12月2日 にC32の現車試験を 撮影に行った時に、肩慣らしならぬ指慣らしに撮影したものです。新横浜〜米原まで141A=B1に乗車して米原D1#でのウォーミングアップがこの 1枚!

▲ 東海道新幹線 米原駅D1# H13.12. 2  8:52  141A=B1 3A=C4
Canon EOS 3 EF17-35o (24o) F2.8L USM 1/4000sec f4 RDPV+1

▼ カメラを構える

まずはこの日の調子を確かめるため、愛機に17-35を装着し退避中の141Aを3Aがパスする瞬間を狙ってみました。
撮影範囲は141Aを物差しとして、ノーズ先端の真下にある枕木と、平行位置にあるD0の枕木が通過する3Aのシャッターポイントになる。 従って撮影範囲は、これより枕木2本程度とればOK! 次にピントをどこに合わせるかだが、 いくら被写界深度が深い広角レンズとはいえ、シャッター速度を優先させるため絞りは 開放値に近い。D0〜D1間は芯〜芯で4,200o。このような場合はズバリ、B1の前部標識灯に合わせるのがベストだ。あとはシャッター速度なんだが、 迷わず1/4000secを選択した。絞りはf4でRDPV+1、141Aが米原に到着するのが8:50。3Aの通過が8:5245だから 細かく露出を測っている余裕などない。時には、頭の中のマイコムトッラクで露出決定することもある。これには、 普段のデータを自分の頭の中にインプットしておく必要があるのだ。目的はあくまでウォーミングアップなんだが・・・。

さて、いよいよ3Aが141Aをパスする瞬間が近づいてきた。

▼ 音を聞け!

まず人間の持つ五感のうち聴覚を 最大限に使います。近づいてくる列車が見えないため、近づいてくる列車の音でタイミングを計ります。耳は3Aが接近してくる音を聞き、目は シャッターポイントを見つめる。そして呼吸を整えその瞬間を待つのです。定刻、141Aの横から3Aが飛び出す!  愛機は一瞬の時を刻み取り、 身体は0.4秒に酔いしれる。これぞ快感!本日絶好調!!

▲ 東海道新幹線 小田原駅U1# H 9. 9.28  454A 113A 461A  
Canon EOS 5 EF17-35o (24o) F2.8L USM 1/3000sec f4.5 RDPU+1

▼ 実写訓練

以前、ホームでの撮影の合間、暇つぶしに左の写真にあるようなことをよくやったものだ。物陰から飛び出してく列車を撮るには、 やはり“音”がたよりだ。これらの動作、反応に対して、体を馴染ませることが大切である。

▼ 音に対しての反応

基礎編でも述べているが、反射神経を鍛える上でこの手の 撮影訓練は大切だと思う。反射神経が鍛えられていれば、危険回避能力の向上にも繋がる。例えば、交通事故などに遭遇した時、極端な話、 一瞬の身のかわしが生死を左右する。人間が生きていく上で、とても大切な訓練だと思う・・・

このように物陰から飛び出してくる列車に対して、その迫ってくる音が聞えなかったら、絶対にベストポイントでシャッターは切れない。 脳は列車の迫り来る音を聞き指先に素早い信号を送り、列車が視界に入った瞬間シャッターを切る動作をコントロールする。これって、 制御伝送システムの働きと一緒だよね。ある意味、このアングルの撮影は、列車を広角レンズで真横に捉えたものより撮影難易度が高い! と私は思う・・・




広角レンズでの実写

友人のWひかり氏が、
「第2千曲川橋梁で緑Dr.を是非撮ってみて下さい。」
この言葉に誘われて、ちょっとだけ緑幹線に浮気! この日の私は夜勤明けの状態で上田へと向った。今回のターゲットがS1だけに滅多にないチャンスだ。しかも斜張橋は東海道新幹線には無い アングルだ。

斜張橋をきっちり画面に入れるには28oがドンピシャリ!この場合画角は75゜かなり手前にシャッターポイントがくる。推定240q/hで 計算すると 67m/s 1/3200secで約2.1p 撮影距離約20m。これでなんとかいけると判断。絞りは黄色の被写体露出に合わせて+1段 のf4  RDPV+1 設定はこれでOKだ。

▲ 北陸新幹線 上田〜佐久平 H13. 2.21  12:45  7906E S1
Canon EOS 3 EF17-35o (28o) F2.8L USM 1/3200sec f4 RDPV+1

さて、問題は体調だ。夜勤明けは脳に十分な酸素が行届いておらずボーッとしている。しかも現地は小春日和で夜勤明けでなくとも眠く なりそうな雰囲気だ。しかし、失敗は許されない、チャンスは二度とないのだ。普段と同じことをやればいいのだが、数々の要因がプレッシャー となって重く圧し掛かってくる。結局最後は自分との闘いである。

▼ 戦闘開始!

12:45画面左に前照灯が見える。いよいよ戦闘開始だ! S1がシャッターポイントに近づく・・・
「うっ、意外に速い!」
「はやまるなっ、シャッターポイントまでタメろ!」
勝負は0.4秒!一瞬で決まる。
「置きピン位置から枕木3本手前、よしシュートだっ!」
シャッターを切ってから被写体が視界から消えるまで僅か2秒ちょっとの間であった・・・

こうして戦いは終わった。ホッとして胸を撫で下ろし空を仰ぐと、太陽が雲に隠れつつあった。天は我に味方するなり・・・ しかし、この日の 夜勤は結果として睡魔との壮絶なバトルを繰広げる展開となってしまったのである。

▼ タ メ

広角レンズを使って新幹線を撮る場合の秘訣はズバリ、“タメ”である。猛スピードでかっとんでくる列車をどこまで我慢して引き 付けられるか。この1点で勝負の明暗は決まるのだ。



広角レンズでの実写・・・その2 トラス抜き!


  • 東海道新幹線 新富士〜静岡 富士川河川敷
  • ▲ @ H10. 3. 2  12:40  13A W 5
    Canon EOS 5 EF17-35o (35o) F2.8L USM 1/4000sec f5.6 RDPU+1
    ▲ A H10. 3. 2   8:43  43A J 23
    Canon EOS 5 EF17-35o (35o) F2.8L USM 1/4000sec f5.6 RDPU+1
    
    
    
    
    
    
    
    
    

    ▼ 富士川定番

    なうての富士川橋梁定番トラス抜きといえばこの35oである。トラス△の間にきっちり列車の顔を抜取ればいいことなんだが、こうして 枠を置かれると、シャッターを切る正確さがハッキリとでてしまう。トラス△の幅は約5m、300系のノーズの長さと略同じだ。△を1スパンと すると、500系の場合は2.5スパンとなる。270q/hで75m/s これに0.4秒のレリーズタイムラグを当てはめると5mのズレ。シャッター ポイントの5m手前でシャッターを切ればいい。つまり、シャッターポイントの1スパン手前でキッチリ切ればOK!とまぁ理屈はこうであるが 現実は・・・でも、手前に物差しがあるので慣れればかえってやりやすいのである。また、自分のクセも判るのでトライしてみることが大切だ。 自分のクセが判ればそれをどうやってカバーすればいいかという結論に達するのだ。私は、全てをここから始めた・・・ 実写訓練あるのみ!

    
    
    
    

    ▼ 撮影時刻の違い

    富士山が1日中安定して撮影できる目安は、西高東低の気圧配置で北西の風、最高気温10℃以下で12月〜2月の間、特に南岸低気圧 の通過した後はバッチリ冠雪している。しかし、3月ともなると日中の最高気温も上がる。作例@Aは同日の撮影にもかかわらず朝と昼とでは これだけの違いがある。まず風向きだがAの朝方は西風。パルプ工場の煙突の煙に注目していただければ良く判ります。@は南東の風、全体的に 温度も上昇し紫外線も強くなってきて彩度の違いがハッキリしている。この2枚の画面を橋梁と富士山に2分割して@の橋梁部分とAの富士山を 合わせればグーなんだがねぇ・・・

    
    
    
    

    ▼ 富士山の冠雪具合

    まず、雪質からいうと真冬の富士山は粉雪なので山頂の雪が飛びやすい。春の富士山は五合目あたりまでもが冠雪する。雪質はベタ雪なので 雪自体は飛び難いのだが、気温の上昇と共に風向きが西風から東風に変わりやすく五合目あたりに雲が出始めると、どんどん雲が巻き始め1時間も しないうちに山頂まで覆ってしまう。早いときでは30分! ・・・春富士は朝方が勝負!



    広角レンズでの表現方法・・・その1


  • 東海道新幹線 新富士〜静岡 富士川河川敷
  • ▲ B H 9. 1.26  10:50  449A & 402A 
    Canon EOS 5 EF17-35o (20o) F2.8L USM 1/4000sec f5.6 RDPU+1
    ▲ C H 9. 1.26   9:55  213A 
    Canon EOS 5 EF17-35o (20o) F2.8L USM 1/4000sec f5.6 RDPU+1
    
    
    
    
    
    

    ▼ 逆さ富士の定番

    ここもやはり定番は35oなんだが水面に映る列車も撮り入れたかったので、あえて20oでトライしてみた。作例@Aの場所から 約50m水流に近寄ったとこで19橋脚のあたり。作例Cでも判るように100系のダブルデッカー部分までギリギリ納まる。

    
    
    
    
    
     

    ▼ 構図からみるレンズ効果

    基礎編でも構図について触れたが、画面に被写体を対角線的に捕らえるのは、動きのある構図として最もポピュラーな表現だ。更に これを遠近感を強調した画面にするとスピード感までもが表現できる。@とCを比べるとCの方がスピード感が強調されていて安定感も ある。実際には@の方が50q/h速いんだが・・・ これが広角レンズのもたらす効果である。

    
    
    
    
    
     

    ▼ 撮影距離の違い

    作例BCは撮影位置及び露出は全て同じもの。違うのは撮影距離と撮影時刻である。撮影時刻は約1時間の違いなので橋桁と橋脚部分 への陽の当りの違いぐらいで画面全体の彩度の違いは見られない。しかし、同じ撮影範囲で撮影距離が違うと被写体のスピード感や迫力がまるで 違って表現されてしまうのだ。スピード感や迫力は対角線を取り入れた構図では被写体を画面一杯に捕らえた方が強調できる。尤もBの場合は撮影 目的が違うが・・・



    ▲ D 東海道新幹線 新富士〜静岡 富士川河川敷
     H 9. 1.26  15:00  53A 
    Canon EOS 5 EF17-35o (28o) F2.8L USM 1/750sec f11 RDPU+1
    
    
    
    

      富士川河川敷では、平成9年3月末日に護岸強化工事が完成すると、川の流れが変わってしまい このような逆さ富士を撮ることができなくなった。現在は、この場所から更に水流方向に300m程下って行くとトラス橋の上に富士山を出して 逆さ富士と新幹線を撮影できる。作例Dの場所がそうである。この場所からは28〜135oまでのレンズが使える。



    広角レンズでの表現方法・・・その2

    ▼ 通過列車を真横で捉える

    最初は、相生に停車中のN700系の先頭形状を真横で撮ろうと思った。 ファインダーを覗いて見ると、なんとなくただ撮るのでは面白く ないと思った。そこでここを通過する12A・・・500系を入れようと思いついた。どうせなら両車両の先頭部分が交差した瞬間が面白い・・・

    ▲ E 山陽新幹線 相生駅D1# 1号車付近 H17.11.12 12:24 12A=W2 8960A=Z0 
    Canon EOS 3 EF17-35o (24o) F2.8L USM 1/8000sec f2.8 RDPV+1

    時速300km/hを秒速に換算すると83m/s こいつを真横で確実に止めるには、1/8000secが必要。実際には被写体が1.4cm動くことになる が、きっちり止まる。この目安となるのが枕木だ。1ピッチ588mmの間隔で敷き並べてある。これを物差し代わりにすれば1.4cmは問題なく 止まって写ることが判る。

    ▼ シャッターポイント

    左の写真でシャッターポイントを説明すると、枕木が画面に対して1本だけ垂直なっているところだ。これを中心に枕木が左右に 放射線状に広がって写っている。これがつまり広角レンズの画角の特徴だ。

    83m/sを0.4で割ると21m/0.4sとなり、これをレリーズタイムラグ0.4秒で割る。そうするとシャッターポイントの約5m手前で切ると ドンピシャリとなる。ということは、シャッターポイントの枕木 から9本手前の枕木に被写体 が入った瞬間にシャッターを切ればOK!計算上の理屈はこうである。後は、気合一発でしとめる!そう、あのロバート・デ・ニーロが “ディアハンター”の中で言った名台詞・・・「一発でしとめろ!」だっ。



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