◆  新幹線電車をかっこよく撮るには・・・ ◆


幼年時代、6基のパンタをスパークさせかっとんでゆく新幹線電車を見て「かっこいい!」 と思った。私は今でも、常にこの気持ちで新幹線を撮り続けている。そこで、このページでは 私@J1の撮影スタイルを紹介したいと思います。

▼ 基本装備

EOS3をメインにLズーム(EF17-35mm F2.8L USM, EF28-70mm F2.8L USM, EF70-200mm F2.8L USM)を使用。単球望遠は、 428(EF400mm F2.8L IS USM)に、必要に応じてテレコン(EX EF 1.4×U, EX EF 2 ×U)を装着。


走行写真を撮る

2002年の秋に下の池で撮ったT4の写真を例にとって解説しましょう。

▼ フレーミング

まず現地に着いてカメラを構えたら撮影範囲を決めます。どこからどこまでを入れるか、それによってレンズの選択をします。撮られる モノを被写体。カメラの置いた位置から、被写体までの距離を撮影距離という。また、被写体の後ろの 背景をバックといい、その中でも比較的近いものを中景、山や雲など を遠景といい、被写体よりカメラに近いものを近景と 呼びます。フレーミングする時、常にこのことを意識して構えること がLesson1である。
  東海道新幹線の場合、目安となる架線柱の1スパンの標準が50m。つまり車両2両分に相当するわけです。フレーミングで 最も大切なのは正しくファインダーを覗くことです。これを怠るとギリギリのフレーミングなどでは 視差が 生じ、被写体がフレームアウトしたりして失敗の原因となってしまいます。

▼ カメラアングル

列車撮影に限らず、被写体の表情を引き出すのにこのカメラアングルが大切になるのです。フレーミングと同時に行う作業で 被写体に対するカメラの角度のことをいいます。 ノーマルポジション、ハイアングル、ローアングルに分けられます。
  東海道新幹線では、沿線にLCXラインが あるためハイアングルでの撮影が好ましい。また、置きピンがしやすいので比較的楽に撮れる。

▼ 焦点合わせ

列車撮影はこのピント合わせの作業の80%強を置きピンと呼ばれる方法で行う。なにしろ被写体は200q/h以上で走ってくる物体だから 1発でし止めなければ枠にきちんと入らない。置きピンは、当然目的の列車が走ってくるレールに合わせるのだが、実際にはレールを枕木に固定 している板ばねのボルトに合わせるのがベストだ。私のカメラにはカスタムファンクション機能があり、CF4-1を選択しAEロックボタンでピント 合わせ、シャッター半押しで露出決定をしている。これは私自身のカメラワークに適しているからである。この機能を変えるのは子供の運動会の時 くらいかなっ。

■ 露出とは、シャッタースピードと絞りの組み合わせ+フィルム感度

露出とは、フィルムに与える光の量の調節のことです。解りやすく説明すると、まずカメラを肉眼と仮定します。 真夏の太陽が照り 付ける海岸や、降雪の晴天下でのゲレンデでは太陽光線の反射がきつく思わず目を細めてしまいます。それとは逆に、薄暗い場所では目を大きく 開いて見ます。これがいわゆる“絞り”の働きです。そしてこの目を細めたり開いたりしている時間が“シャッタースピード”になるのです。

これを具体的に説明します。例えば、酒のディスカウントショップでA君とB君とが350mlの缶ビールを10本買いました。A君は、 これを大き目のビニール袋に10秒で全部入れました。B君は、A君より小さいビニール袋に入れたため、倍の20秒かかりました。つまり、缶ビール をビニール袋に入れる時間がシャッタースピードでビニール袋の大きさが絞りになるわけです。絞りを開けば速いシャッタースピードが使え、絞り を絞れば遅いシャッタースピードになる。そして、この缶ビール10本が光の量、つまり適正露出となります。それから、缶ビール10本の入った ビニール袋をそれぞれが持って店を出ようとしたら、B君の持ったビニール袋が破れてしまった。どうしてだろう?よく見るとA君のビニール袋は B君のより大きい分、ビニール袋自体が厚いのだ。このビニール袋 の厚みがフィルム感度になるのです。

絞りはカメラに入る光の量。シャッタースピードはその時間。フィルム感度はこれらを入れる袋。この袋の強度が強い方が 高感度フィルム。強度が弱い方が低感度フィルムとなります。

▼ 露出の決定

列車の走行写真は走っている列車をベストポジションで止めることである。何だか矛盾した話だが 、列車とて“顔が命”どこかのカメラマンも同じこと言ってたよね。つまり止めることによって、静なる 平面に列車の顔を強調し、その動きを表現できればその写真はベストといえよう 。そもそも写真は、3次元のモノを2次元に表現することで、絵を描くことを一瞬にして実施するのだ。これ をシャッターと絞りの組み合わせにより行うのが露出の決定である。作例は 1/2000sec f5.6で撮影したもの。このように背景を生かす アングルでは、列車が止まるギリギリのシャッタースピードで、できる限り絞り 、パンフォーカスぎみ に したいものである。

▼ レリーズタイムラグ

シャッターを切る時、被写体を目が捕らえ脳が反応して指先に信号を送り、シャッターボタンを押しシャッター幕が開くまでの時間を いう。 人により多少の誤差はあるものの、速い人で0.4秒かかるとされている。肝心なのはこの時間を縮めることではなく、自分の レリーズタイムラグを把握することである。置きピンした場所から枕木何本先でシャッターを切るかである。当然、選択レンズや撮影距離 、列車のスピードによって異なる。これらを自分の体に覚えさせることが 1発切りの極意で ある。

▼ 被写体の角度

C0を初めて見た時「かっこわり〜」と思った。特に斬新な500系の後のデビューなだけに大半の人がこのように思ったことでしょう。 700系は標準〜広角レンズでなるべく横がちに撮ると見栄えよく撮れる。女性でも前から見ると寄り目でエラっ張りといった漫画チックな 顔をしていても、横顔は以外に鼻筋がとおっていてキリッとして見えるタイプがいる。いわゆる横顔美人で、700系はこのタイプである。 このように車両の一番素敵な顔を知ることも大切です。かっこよく見せるには、かっこよさを引き出すの です。そして、これも新幹線攻略法の一つなのである。


作例写真を比較する


▼ @〜C 東海道新幹線 掛川〜静岡 205KP付近
@ H14.11. 3  7:26  6980A T4
Canon EOS 3 EF28-70o (65o) F2.8L USM
1/2000sec f5.6 RDPV+1

@〜Cまでの写真はA以外同日の撮影です。Aそのも7日前の撮影なので、光線状態がほぼ同じことからサンプルとして取上げて みました。 

A H14.10.27  9:26  454A G1
Canon EOS 3 EF28-70o (50o) F2.8L USM
1/2500sec f5.6 RDPV+1
B H14.11. 3  10:34  2146A B1
Canon EOS 3 EF28-70o (50o) F2.8L USM
1/2500sec f5.6 RDPV+1
C H14.11. 3  10:24  6A W1
Canon EOS 3 EF28-70o (50o) F2.8L USM
1/2500sec f5 RDPV+1

▼ 撮影基準露出

マイコムトラックの新幹線撮影基準は、晴天順光時、 標準レンズ使用で ISO 200 1/3200sec f5 としている。

▼ 被写体露出

被写体露出は被写体の明暗を正しく表現する上で、重要なポイントです。明暗、つまりコントラストを測るのです。コントラストを 測る上で実際に物差しとなるモノがあります。それはグレイスケールです。 実際に現地でグレイスケールをあてて被写体露出が適正かどうか測るのは土台無理な話である。そこでグレーに一番近い色のバラストを基準に します。シャッターポイント部分のバラストをスポット測光するのです。この数値の−1段が晴天順光時のパールホワイトのボディーカラー露出と なります。

車両系別の露出では、700系、300系を基準とするとして、100系は同じボディーカラーだが窓枠部分のブルーの割合が多くノーズ下が影る ため+1/3段。 500系はライトグレーだがメタッリクが入っているため晴天順光時は−1/3、曇りでは+1/3。 T4のレモンイエローは+2/3段。 T3イエローならば+1段である。 

▼ 背景露出とフレーミング

ここ、下の池では被写体露出との差が大きいため、バックを生かす意味で私の新幹線撮影基準露出より+1/3〜+1/2段が好ましい。 @はここの定番フレーミングの65o。A〜Cは季節感を出すため50oで左下の部分を多めに入れてある。

▼ 写真の構図と表現

構図とは画面を統一感のあるものに組み立てることで、構図によって画面の安定感や動きが強調されます。@とBを比較すると安定感 という点では@の方があります。また、どちらも動きのある構図なのですが、@の方がインパクトがあります。それは特殊な車両だから です。この構図については、後ほど詳しく説明します。

作例写真を比較する…その2

下のD、Eの写真で季節感の違いや、撮影位置によるバックの処理について解説します。 

▲ D 東海道新幹線 掛川〜静岡 205KP付近 H10. 8.11  9:21  42A J 1
Canon EOS 5 EF28-70o (65o) F2.8L USM 1/2000sec f5.6 RDPU+1
 
▲ E 東海道新幹線 掛川〜静岡 H 8. 5.26  10:04  448A NH82
Canon EOS 5 EF70-200o (70o) F2.8L USM 1/2000sec f4 RDPU


▼ 季節感を出す

作品を表現する上で、大切なことである。見たままそのままを写せばいいのだが、ここは草木の色付きが他より約1ヶ月遅い。新緑を狙う なら5月後半がいい。但し年によって寒暖の差があるので常に気象情報を欠かさずチェックすることが好ましい。実際に見たままを表現しようと して、茶畑の露出に合わせてしまうと、新幹線の色がまるっきり飛んでしまいます。ここはあくまでも主役は新幹線ということを頭に入れて下さい。 まず被写体露出と背景露出との差を見るのです。これがすなわちコントラストです。作例Dは盛夏に私の大好なJ 1を撮ったもので、 明暗の差がはっきりと判ります。このような場合、どこを生かしてどこを殺すかがポイントです。まず、 被写体が止まって写るシャッタースピードを決めます。次に被写体露出と、背景露出との対比を考えます。このような場合、バックの色は 黒として考えて下さい。そうしないと肝心のJ 1の顔が飛んでしまいます。しかし季節感を出すうえで、最終的に被写体露出から +1/2段の設定を選びました。キーワードは、真夏の緑は“濃緑”・・・です。








▼ 撮影位置の違い

ここ、下の池のお立ち台は4段構えである。そのうちの3段目がヘビコン架線柱のビームが綺麗に重なり、バックの茶畑がすっきり 見えることからここがベストポジションといえよう。E以外は全てこの3段目からの撮影である。Eはパンタカバーに特徴のある H82の ため撮影距離が近くなる2段目から狙った。2段目は手前にLCXの支柱が1本大きく写し出されるので、これをカットするため70oで 撮影した。Dと比べると増感分が違うことになるが、実際の差は被写体露出のハイライト部分の差によるものである。ちなみに下の池の お立ち台は、1段目では2段目より更にLCXの支柱が画面を圧迫し、4段目は架線や、き電線がうるさい。そして、ここのベストな撮影 時期は、やはり新緑の頃かなっ。



構 図

構図とは、画面を統一感のあるものに組み立てることをいう。構図については、絵画の世界で古くはギリシア時代から色々な構図法が考え られた。主には、画面の中に円、三角形、台形、放射線などの形を想定し人物などを並べること、また、線 などで分割された二つ以上の比率を均整のとれたものなどにすることでした。しかし、写真の場合は、絵画のようにキャンパスの上を測り ながら制作するというわけにはいかず。比率などを正確に出すことは難しい。しかし、左右対象と非対称。曲線や直線などの違いによる 感覚的な表現の変化を意識して覚えることが大切である。つまり、被写体と背景を構図に当てはめて画面を構成するのです。折角ピントや 露出がバッチリ決まっていても、構図がしっかりしていないと写真は台無し・・・構図は、写真を構成する土台と考えると良い。つまり、 構図がダメだと土台無し・・・ 

▲ F JR東海浜松工場 H 9. 8.24 G29 & A0
Canon EOS 5 EF28-70o (50o) F2.8L USM 1/30sec f5.6 RDPU+1
 
▲ G 東海道新幹線 掛川〜静岡 H20. 1. 4  8:19  61A C18
Canon EOS 3 EF70-200o (120o) F2.8L USM 1/4000sec f4.5 RDPV+1

▼ 安定した構図

シンメトリー、三角形、円などによる構図は、安定した印象を与えます。特に三角形の頂点を上に した構図は、どっしりした感じになります。また、左右対称でなくとも、左右の分割比率が7:3程度なら安定して見えます。

Fは、人間の一番安定した視野に近い50oレンズで、さらにシンメトリーな構図。左右の編成のノーズの長さの違いから、若干右側を多く してある。画面の中心から天地左右に向かって放射線状に広がったラインは、奥行きをも強調している。


▼ 黄金比矩形くけい

みなさんの中には、“黄金比”という言葉をご存知な方もいらっしゃると思いますが・・・絵画、デッサン、デザインなどを専門的に勉強 した経験のある人は必ずといっていいほど知っています。この黄金比は約1:1.618とされ、この法則に則った現象や造形物は、自然界や 歴史的美術品などにも多く見ることができます。写真を撮る際にも、この黄金分割を構図に適用するとまとまりがいいと言われています。 さて、この黄金比で線や面を分割する ことを黄金分割と いいます。黄金分割の数値は、前述のように約1:1.618となりますが、これでは感覚的に解りにくいので、より単純に2:3と考える ことにします。

ここで、毎度お馴染みの富士山バックの定番アングルを例に挙げてみよう。実は、富士山バックの定番アングルに秘められた幾何学的美学 がここにある。

では、具体的に解説してみよう・・・基本的にGはシンメトリーな構図なのだが、富士山は、連峰から成る山々とは違って単独に聳え立つ 山。裾野が大きく広がっているのが特徴。しかし、これをそのまま表現すると、被写体が小さくなってしまう。そこで、富士山の冠雪状態 が良好であるときは、余計なことは考えずに、被写体である新幹線電車を、架線柱の間1スパンで抜く とGの様になる。これがすなわち黄金分割に相当するのだ。
のボタンをクリックすると分割線(赤)、中心線(青)が表示される。これは、分割線と画面の中心線の 位置を比較するために両方を示した。このアングルの狙いは、言わずと知れた富士山と新幹線とのの組み合わせ。画面の背景となる富士山 をシンメトリー(1:1)に配置するのではなく、斜面のなだらかな西側を若干多めに入れることで2:3にする。ここがポイント。これで 左右の配置が決まる。今度は、天地の配置だ。基本的に天地は、天2に対し地3とするのが一番安定した構図になる。富士山頂に傘雲が かかっているようなときはまた話は別だが、地に足がついているということを意識すると分かり易いと 思うよ。つまり、これがオーソドックスかつ現実的な表現なんだ。


▲ C 東海道新幹線 掛川〜静岡 205KP付近 H14.11. 3  10:24  6A W1
Canon EOS 3 EF28-70o (50o) F2.8L USM 1/2500sec f5 RDPV+1
 
▲ H 東海道新幹線 掛川〜静岡 205KP付近 H16. 5. 2 10:24  2A  W 1
Canon EOS 3 EF28-70o (60o) F2.8L USM 1/2000sec f5 RDPV+1

▼ 不安定な構図

ポイントとなるものが、片方に偏り過ぎたり、中途半端な位置にあると不安定な感じになります。表現としては安定した構図より強い印象 を与えることができるが、極端になると画面全体の構成を破壊する恐れもある。この辺を表現する加減が、ズバリ、作者のセンスに繋がる のだ。


▼ 動きのある構図

不安定な構図と似てはいるが、対角線などを強調すると特に動きを感じさせる構図になる。まぁ、大半の鉄道写真これに相当する。

作例CとHは、動きのある構図。このふたつの作品の違いは、不安定さの違いだ。Cは、季節感を出すために、近景を多く入れた分Hに 比べて不安定な構図になっている。Cの場合、Hよりも天地の黄金比が崩れている。このふたつの作例の場合、対角線(軌道)以外に 強い線がふたつ存在する。それは、架線柱とそのビームである。特にビームが綺麗に重なる位置で撮影しているため、縦の線 (架線柱)よりも横の線の方が強く表現されている。ここがポイントで、このような場合、黄金分割で構図処理することで安定感を出すの である。つまりHは、ビームが重なる位置を天地に対して2:3で処理しているからだ。対角線を強調させている画面では、縦横の強い線 は画面内を区切ってしまい、厄介なアクセントに成りがちなので処理の仕方にひと工夫が必要なのだ。画面を2分割させる位置、つまり 中心線の位置にもっていくのは画面構成上タブーとされている。

 対角線を強調した動きのある構図以外でも、縦横の強い線(架線柱やビーム)の処理は注意 すべき点である。

 こんな経験ある人は・・・

よくある場面の写真を同じ位置から3人が同時に撮影したとしよう。仕上がった写真を見比べると、どうも自分の作品だけがバランスが 悪い。何故、自分のだけがバランスが悪いのだろう・・・? 被写体も3人とも略同じ位置で捉えているし、露出も同じなのに・・・ こんな経験のある人いませんか? それはきっと構図に問題があるからですよ。バランスの悪さは、九分九厘“黄金比を無視”して いるからですよ。そこに気づけば、自分自身きっと変化があるはずです。




◆  編成形式写真を撮るには・・・ ◆

さて今度は、編成形式写真つまり俗にいう止まり写真。こいつもなかなか奥深いものがある。走行写真とは対照的で露出は シャッター優先ではなく、深度優先の撮影となります。

車体デザイン、扉や窓の位置、台車形状、床下機器の配置、パンタグラフの形状など、その車両のもつ特徴を細部までしっかりと写すのが 課題である。ここでは 、幹線定番Dr.イエロー東京駅編成形式バルブを 例にとって解説してみよう。


バルブ露出による撮影

▼ バルブ露出

バルブ露出とは、シャッターボタンを押している間だけシャッターが開いている長時間露出用のシャッター速度をいいます。主に フラッシュ光がとどかない部分まで撮影する場合に使います。つまり、夜の止まり写真はコレ! 当然、被写界深度を確認しパンフォーカスで撮る のである。

▲ I 東海道新幹線 東京駅 U18#10号車付近 H 9. 2. 8 23:22 3957A T2
Canon EOS 5 EF28-70o (50o) F2.8L USM 10sec f22 RDPU+1
 

▼ 幹線定番Dr.イエロー東京駅バルブ

近年Dr.イエロー東京駅バルブは何故か マニアの間に定着して しまった。幸せの黄色い新幹線は誰も が一度は撮って見たいというのが心情である。

 しかし、平成16年8月1日以降は、T3の回送も空きスジのある日曜日の朝とかで、夜は殆ど走ら なくなった。そして、平成17年9月30日にT3は廃車となり、この“幹線定番Dr.イエロー東京駅バルブ”も過去のものとなり、噂も耳に しなくなった。

▼ 編成をバルブする基本装備

まずは基本的な撮影条件から・・・ 器材装備は50o単球にローアングル開脚可能な三脚とレリーズロックのついたレリーズケーブル の3点セット。

レンズは標準ズームでもいいが歪の少ない単焦点レンズが良い。標準ズームの場合はやはり単焦点レンズと変わりのないLズームを推奨。 50oは前述のとおり、人間の視野の中で比較的視力のいい50度くらいの範囲が写せるからで、最も歪が少なく自然に写るからである。  三脚はローアングル開脚可能なものがいい。それはカメラポジションの前面:側面比が2:8もしくは3:7で、カメラの高さは車両の高さ 1/2より低い場所で構えた方が、安定した画面構成になる。従ってホームでの撮影は、しゃがんで撮った方が良いということからだ。また、 レリーズケーブル装着不可能なカメラの場合は、セルフタイマー機能を使うのも一つの手段である。


▼ 露出の測り方

セッティングが完了したら露出を測ります。画面中の白いモノをスポット測光し、それを5倍したものが 適正露出です。 もう一つやり方は被写体を照らしている光源を測り10倍にしても適正露出が測れます。

▼ 色反射と色かぶり

特にバルブ撮影においては色反射と色かぶりという現象に注意しなければなりません。色反射は、被写体の周囲に濃い色彩がある場合 にその色が被写体に反射して映り込んでしまうことをいいます。作例Fの場合はホームの蛍光灯の光がT2の外板に反射して黄色を飛ばして しまっています。実際にはあとシャッタースピード1段落としなのですが、ノーズ左上部が完全に飛んでしまうのであえて足周りの露出は無視 しました。

また色かぶりとは被写体周囲の反射光ではなく透過光が被写体に影響して色をかぶらせることをいいます。例えば赤色のビニールなどを 通過した光が被写体に当りその影響で赤っぽくなってしまうという現象です。

▲ J 東海道新幹線 東京駅 U18#16号車付近 H 9. 2. 8  23:15 3957A T2
Canon EOS 5 EF28-70o (35o) F2.8L USM 10sec f22 RDPU+1
 

▼ 撮影ヒント

撮影時間に余裕がある場合は段階露出で 撮影するのがいいです。その場合、絞りはホールドでシャッタースピードで行うのが基本です。

▼ ひとこと

現在では、安全柵が設置されてこのようなアングルでの撮影は不可能となってしまった。ここで取り上げたのはあくまでも基本例という ことだからです。この写真のT2は最終全検前で外板の腐食も目立ち、決して綺麗な姿では なかった。また、カメラを構えている者は私以外には誰もいなく、23時を過ぎた東京駅新幹線ホームは、それは静なものでした。ところ が、T4の検測が開始され、T2が廃車になった後のT3は、その存在価値が クローズアップされたのか、走行時に は軽く30名を上回るファンがこの東京駅にも集まっていた。この頃 の“Dr.イエロー東京駅バルブ”祭り状態だった。それにしてもT2が 健在の頃は、
  「今月は※A951〜かぁ。じゃーパス」
なんて、T3だとわざわざ撮りに出掛けませんでした よ。それがどうでしょう、平成16年4月からT3は博総駐在となり、測定機器検査のため に東二両へ回送された時には、沿線各地にマニアが出没し、 某有名撮影ポインなどは約50名のファンが集まるなどの大盛況振りですから不思議なものですよ 。T3廃車後のDr.イエロー運転日は大分ギャラリーの数も減ったとのことで ある。正確には、T3が最後に博総へ回送された平成17年5月9日以降と言うべきかな。

それはそうと、作例IのT2、前頭部の薄っすらとした光が 気になるよねぇ〜っ!


▼ 作例比較

Jは俗にいう神田側からの撮影。ホームの長さに限界があるため50oでは納まらず35oでのバルブ。やはり歪という点では致し方 ない・・・ノーズが200系に見えるのだ!これを見れば何故50oかがお解りいただけるかと思います。


バルブ露出による撮影・・・その2 クローズアップ

▼ クローズアップ

さて、今度は編成をバルブするのではなく車両の一部分やバックの建物などをクローズアップしたバルブ撮影を解説しよう。作例は、 闇間にぽっかりと浮かんだ小田原城の天守閣。昼間はなんでもないただの城の天守閣だが、こうしてライトアップされるとなかなかいい絵 になるのである。 







▼ 被写体によるアングルの違いを比較

ここでのアングルは車両のノーズの長さによって撮影位置の修正が必要になってくる。それは停止限界標識と車両のノーズの位置関係に ある。天守閣をバックににすると丁度停止限界標識が顔にかかるので、これをどう処理するかがカギだ。ポイントは、“前部標識灯” つまり、目の表情が解かる位置で撮影する点だ。


K 東海道新幹線 小田原駅
U1#1号車付近
H12.11.11 19:56 983A T2
Canon EOS 5
EF70-200o (105o) F2.8L USM
30sec f16 RDPV+1

Kは往年の0系タイプのT2。Lは言わずとしれた300系量産先行試作車J 1。この2枚の写真を比べると露出と バック以外は全てが違う!ノーズが長い300系の方が0系タイプより後方で撮影できるため、このアングルに適している。そのため Lは、バックを強調する ため縦アンで撮ってみた。一目瞭然!余分な空間がなくなり奥が強調され、更にはJ 1の特徴であるエラも良く判る。

 




そのバックの天守閣だが、Kに比べてLの方はライトアップの光量を落としており被写体とのコントラストが?であったが、セオリー どおりの白×5の露出で結果オーライ! 実際の単体露出としてはオーバーなんだが・・・それにしても全検上がりのJ1は眩し過ぎる!











  この小田原城バックバルブも、平成18年4月に開校した国際医療福祉大学
     小田原保健医療学部の校舎によってできなくなってしまった。実に残念である。







L 東海道新幹線 小田原駅U1#1号車付近
H15.11.27 21:35 7913A J 1
Canon EOS 3 EF70-200o (135o) F2.8L USM 30sec f16 RDPV+1
 

並び写真

▼ 基本はやはりパンフォーカス

この手の並び写真は、所謂集合写真を撮る撮り方が基本と考えて良いでしょう。集合写真は全ての人にピントが合っています。 すなわち深度優先の撮影。問題はどこにピンとを合わせるかです。 この写真は被写界深度の 関係からT3の光前灯。つまり被写界深度はピントを 合わせた位置の後方は深く、前方は浅いからである。ワンポイント知識として被写界深度は、被写体に対して手前1。奥2の割合でピント が合うと覚えておくとよい。

▲ M 東海道新幹線 東京第二車両所 H13. 5. 7 15:30
Canon EOS 3 EF28-70o (35o) F2.8L USM 1/125sec f22 RDPV+1
 
>>次のページからは使用レンズ別に撮影記をもとに迫ってみたいと思います。
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