◆ 中望遠レンズを使用した撮影・・・ ◆
望遠レンズは遠くのモノを画面に大きくはっきり撮影するレンズです。標準レンズより焦点距離が長く、被写界深度が浅いためピントを合わせた モノ意外が大きくボケます。一般的には85mm〜135mm程度の中望遠レンズは、 この効果を利用してポートレートなどによく使われます。 鉄道関係では、よくこの手のレンズは機能性がいいことから流し撮りに使われることが多い。 中望遠レンズ編ではこの流し撮りから入ってみることにしよう。
流し撮り ! Part 1
▼ バックを生かした流し撮り
流し撮りで一番肝心なのは、やはりシャッターポイントです。下の作例@は、退避中の100系こだまを0系ひかりがパスするシーンを 撮影したものです。この時期は、繁忙期になると多客臨に0系が“ひかり”で使われることが多く、珍シーンのひとコマでもありました。 当時、我が子らが言った言葉をそのまま引用するとひかりを 抜くこだまということです。 この日は博臨ひかりが3本ありましたが、朝から露出不足の今にも泣き出しそうな天気でした。しかし、折角の0系ひかりの走行日という のに、家でじっとしているワケにもいかず、気がつくと私は小田原駅のホームにいました。
さて、何も考えずにホームグラウンドに出向いたのですが、このような状況で、どうやって撮ろうか一瞬考えました。当然高速シャッター が切れないので、流して撮ろうとは思っていたのですが、ただ流すだけでは芸がない。そこで 、ひかりを抜くこだまを 画面上で表現することをテーマに置いてみました。100系のダブルデッカー部分にシャッターボイントを決め、画面中心からやや左側 のD0手前のレールに置きピンする。もともとこの角度では、被写体が画面上を移動する距離が短いため、背景はあまり流れない。つまり、 背景をひきたたせる流し撮りになるワケです。更に、これにアクセントを付けるのです。それは、100系のボディーに映し出される0系の 顔である。とまぁ、頭の中ではイメージが湧いたのだが・・・さて、どうやってこれを画面上に現実化させるかが課題となります。
▲ @ 東海道新幹線 小田原駅 U1#7号車付近 H 9.12.30 11:47 9189A NH21
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▼ 被写体の捉え方
基本的には被写体が見えたら、画面3分の1ぐらいの位置で捉えながらシャッターポイントまでもってきてシュートすればいいの だが、左から右やや斜め下へ流すため列車が来る前にレールに沿って何回か空流しをしてみるといいでしょう。実際には上半身で軽く身体 を引くように撮ればこの角度の流し撮りはうまくいきます。
作例Aは、八十八夜目前の下の池での流し撮り!まず、最初に行うことは、シャッターポイントを決め、フレーミングを調整する。 シャッターを切ったときの背景とのバランスが最も良い位置の画面構成を行う。あとは、被写体がやってきたときに画面構成を行った位置 でシャッターを切るだけ・・・ 流し・・・のコツは、カメラを水平に構えてレールに沿って流す。上半身は振らずに下半身をレールに合わせて引く感じで流すとOKだ! A 東海道新幹線 掛川〜静岡 205KP付近
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流し撮り ! Part 2
▼ 流動感を強調する
流し撮りの画面効果と して最も強調されるのが流動感です。被写体を真横から流したアングルではスピ−ド感も強調できるが、その反面、画面が単純になりやすいため ひと工夫が必要となる。作例ABは新数寄屋橋付近から狙ったものです。普段は邪魔な自動車群も夜はそのライトが光源となったり、周り のネオンなどとマッチして画面効果を盛り上げるのに一役買っているのだ。
▼ どれぐらい流すか?
有楽町付近はATC120信号、制限80q/hつまり23m/sということになります。これを一般に手持ち可能な1/60secで切ると、たったの 40p。これでは画面効果は得られない・・・ そこで1/10secにすると2.3m動くことになります。300系のノーズが4.8mですから、略 ノーズ半分の長さ分が流れるワケです。この場合のシャッターポイントは、1点ではなく2.3m幅の範囲ということを頭に入れておくこと が大切です。
▼ フィルム増感による補正あとは、これに絞りを当てはめるのですが、Bは夜の撮影。 ISO200で1/10secにすると、絞りが開放のf2.8でも−2が点滅。そこで フィルムをRMS(P-4)に 入替えた。つまり、フィルム感度を5倍のISO1000に増感したワケです。増感することによって若干余裕のできた分、被写体が黄色という ことでFLフィルターを使用することにした。被写体に当たる光は、やはりマリオンの 蛍光灯が一番強いと判断したためである。BCは同じシャッタースピードと絞りだが、光量を補うためにBはフィルム感度を上げたという ことです。FLフィルター装着の場合、絞りにして約 −1段になります。 B 東海道新幹線 東京〜品川(信)
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このように、普段はうるさい車の渋滞やネオンを利用する。車のライトやネオンの光は格好の画面効果をもたらすのである。 C 東海道新幹線 東京〜品川(信)
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▼ 雰囲気を出す
作例DはBCとは違い夜ではなく朝に撮影したものです。朝の雰囲気を出すために上の2枚とは違って空間を多目にしました。結果として 東京の薄暗い朝が表現できました。
▼ 撮影裏話これは言わずと知れたG47の廃車回送である。で、この車両100系の引退式に充てられたG49の予備車となった関係で先頭車の サイドにLast Run マークが 貼られた。そのおかげで一躍脚光を浴びることとなってしまった。皮肉にもG47はこの日が最初で最後の100系ラストランマーク付きでの本線 走行となりました。 また、東二両から出る最後の100系廃車回送とあって沿線はマニア、マニア で東京駅などは3、40名は いたとか? 丁度出勤前や登校前に撮影できる時間帯だったからなのか? この光景を某駅で目撃した廃回計画者本人は 、あまりの人の多さにビックリしたそうだ・・・ しかし私の撮影した新数寄屋橋にはなぜか他に誰も いませんでした。 D 東海道新幹線 東京〜品川 有楽町付近
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▼ 撮影条件と撮影地の選択
この日の東京は正午過ぎから雨の予報。浜松は朝から雨の予報だった。私の場合仕事の都合で7時15分までに池之端に行かねばならな
かった。東京の日の出は6時41分。自ずと撮影場所は限定された。
「う〜ん。久しぶりにアレやるかぁ・・・」
そう決めたのは1月31日の天気予報を見てからだった。当日の予報は雨、当然駅撮りで雨を強調、正面がちに撮れば多少シャッタースピード
が遅くともなんとかなる・・・いやいや、今回の目玉はサイドのラストランマーク!しかも7時30分から仕事開始だ。
2月2日 6時34分現地着。まずは先行の301Aで試し空撮り、この時の露出は1/10sec f2.8 RDPV+1だと1/3段アンダーだった。しかし、
曇天とはいえ日の出の時刻をまわると露出が僅かに上がりはじめた。6時47分直前の露出は1/10sec f2.8 RDPV+1で1/3段オーバー! 一瞬
ニヤリ、よしこれでいける。6時48分マリオンの陰から飛び出してきた6907Aは先行の301Aより明らかに速いスピードだった一瞬カメラ
が列車の動きについて行けなかった。まさかこんなところで・・・でも意地でなんとか追いついのだった。
「う〜ん。久しぶりの流し撮りは鬼門だなっ!」
ヒヤリンチョ、マジでそう思いました・・・教訓! 普段からきちんと練習していないと、いざ本番って時に決まりませんよ・・・
流し撮り ! Part 3
▼ ブレによる画面効果作例Eは被写体の角度よりも若干角度をきつくして流してみました。実際には、線路のカントに合わせたワケですが、結果としてノーズ 先端から後方にいくにつれて広がるように流れています。まるで、風洞実験でもしているかのように・・・500系のロングノーズが更にスピード 感を増して強調されています。これはよく、モータースポーツなどの撮影で、コーナーリング中のマシンの臨場感を更にだすため、コーナーの バンクに合わせて流すやり方をちょっと試してみました。 E 東海道新幹線 小田原駅 U1#11号車付近 H 10. 4. 5 6:30 1001A W 5
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▼ トラス流し作例F、こちらは典型的な鉄道の流し撮りのひとつで、トラス橋上を走る列車を流し撮りするやり方。流すことによりトラスの奥の列車が はっきりとし、合わせてスピード感をも強調できる。富士川橋梁はバックに駿河湾工業用水橋が入るのでアクセントになる。富士山が見え ない時は、流し撮りをしてみてはいかがかなっ。 F 東海道新幹線 新富士〜静岡
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桜の名所・石垣山
▼ ひとこと
ここ石垣山は新幹線の線路際に桜の木があることから、シーズンになるとファンが殺到する場所である。撮影場所自体が私有地(畑)のすぐ 横なので、畑を荒らしたりなど絶対にしてはいけません。撮影マナーは常識論ですから。なぜこのようなことを書くかというと、 東海道新幹線の0系が末期の頃、この場所に10数人のファンが集まり、畑を荒らし地主とひと悶着あったことを耳にしたからです。
▼ 撮影範囲の変化
私自身、毎年ここにはシーズンになると訪れるのですが、その年によって何かしら必ず変化があります。従って、桜の開花宣言がでた時に
下見をしておくといいでしょう。
実際にこの場所は石垣山トンネルのすぐ横の斜面から撮影するところで、画面右側の部分には防護柵があり、桜の木の左手前には別な木が
ある。画面上部には饋電線などがうるさく入るなど周りは障害物だらけ。おまけに斜面なので足元も悪かったが、現在は階段ができたため足元
は良くなった。一昨年などは線路に一番近い枝が切り落とされていた。ここでのポイントはズバリ撮影範囲をどう決めるか、この一点である。
▼ 石垣山の桜ここの桜は、常に新幹線の風圧を受けている。そのせいかどうかは判らないが枝っぷりも良く、花自体も綺麗である。光線状態は、 13時〜14時30分が順光。作例Fは15時の撮影ですが桜の木の影が下り本線近くにまで忍びよっているのがわかる。従って勝負は、 13時〜14時30分だっ! G 東海道新幹線 小田原〜熱海
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多摩川の夕ギラ
▼ 夏季限定
多摩川河川敷の夕ギラは夏季シーズン限定!特に夏至を中心とした前後1ヶ月がバッチリであるが、この時期は梅雨のためなかなか太陽が 拝めないのが現実である。作例HはJ1写真集〜夏〜 でも紹介しているが、台風一過の土曜の夕暮れ時に撮影したモノです。
▼ 撮影範囲の設定
撮影の狙いとして、まず夕陽がJ1のボディー照らし、さらにその反射が多摩川の水面に当たる。このことを、頭の中にインプットします。
夕陽が反射する位置は、バックの横須賀線のトラスの反射を見て決めればOK!後はこれに水面の反射を加えればいいのだが、実際には1本前の
列車で試すのが無難なのだが、いきなり本番となる場合は、水面の部分を画面の約3分の1程度とれば大丈夫だ。水面のギラリはボディーのギラリ
の真下にくることを頭に入れておいて下さい。
H 東海道新幹線 新横浜〜品川(信)
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ちなみにこの1本前の列車は20AでC 1、静岡でJ 1を抜いてきたことになる。返しは1027Aなので、当然この後、丸子橋の歩道 から400oで流し撮りをした。これについては、次ページの超望遠レンズ編で紹介しよう。
アンダートラスの名所、高梁川橋梁
▼ 山陽3代橋梁名所のひとつ
千種川、吉井川、高梁川は、山陽新幹線の3代橋梁名所である。中でも、アンダートラスの高梁川橋梁は、幹線ファンなら誰でも一度は 訪れる撮影名所である・・・。
▼ 編成別画角範囲の設定!
山陽新幹線内での撮影は、編成の違った車両を相手に撮影するのがキーポイントとなる。つまり、4両編成の車両から16両編成の車両まで が、入り乱れて走行している。そこで、短編成〜フル編成までの画角処理の違いの例を挙げてみました。下の作例は全て、同じ撮影位置 から撮ったものです。各車両の編成と光線状態の違いによって画角及びフレーミングを変えてある。
▼ 早朝の光線はまず、この日の日の出は4:59。南中時12:01、高度75度。日の入り19:03。何れも岡山での計測である。高梁川橋梁の定番アングルは85o。しかし、 被写体が6両編成ということと、早朝の光線が橋梁の特徴であるアンダートラスを見事にライティングしているので、16両編成を捉えるの と同じフレーミングで画面全体のバランスを考慮し、シャッターポイントを少し奥にしてみた。 I 山陽新幹線 新倉敷〜岡山
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▼ フル編成作例Iと比較してみても一目瞭然、同じフレーミングでシャッターポイントを今度は、約3m手前までもってきた。そして、14分の時間差 でこれだけ早朝の光線の当たる角度が変化してくる。 N700系の登場ですっかりシャッターを切る回数が減った700系も、この手の画角・カメラアングルで捉えると様になる。 J 山陽新幹線 新倉敷〜岡山
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▼ Dr.イエローの場合I〜Lの作例の露出は、全てスラブ軌道をスポット測光したものを基準にしており、Kの電気軌道総合試験車の場合は、−1/3、それ以外 は、−2/3で設定した。Kは、太陽の南中時の略1時間前。太陽高度も初夏とあって約70度と、早朝の太陽に比べるとトップライトに近い 状態になっている。 被写体が、7両編成ということと、バックの山の光線の回り込みを生かすため、IJよりも画角を若干広げ、シャッターポイントを手前に もってきて背景部分を多く入れてみた。 K 山陽新幹線 新倉敷〜岡山
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▼ 0系オリジナルカラーこの日、ここでのラストショット。約7時間のトリは、往年の0系オリジナルカラーに衣替えしたR67だ。車両の前後バランスを考え、 画角を85oに戻し、Kを少しトリミングした感じに画面を構成した。 この時間になると、アンダートラスには日が当たらなくなり、太陽はトップライトで逆光。被写体真ん中に架線の影がくる好ましくない 状態だが、ノーズ部分の反射が、こいつを目立たなくしている。 L 山陽新幹線 新倉敷〜岡山
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* N700系はこの手の場所ではかっこよく写らない。逆に700系はいいですよ。
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